ヌード

昨年末に京都市左京区の恵文社コテージでおこなったノンマイクライブを編集した映像がDVD作品として5/6(土)にリリースされます。

半年に一回のペースで続けてきたコテージでのノンマイクライブ。ノンマイクっていう英語はないみたいで(ノーマイクロフォン?)、要は音響機材を使わない生音ライブです。
マイクのないライブはかつて下北沢leteというお店でのライブにピールアウトの近藤さんに誘っていただいておこなったのが始まりだったかなぁ。leteは23人くらい入ったらギュウギュウのお店でちょっとした機材も用意されているけれど基本は生音でライブをする、聴くお店。
ライブに行く、という時ほとんどが音響機材を通した音を楽しみに行く、というのが一般的です。
生音ライブをやり始めた当初は、当然自分にとってもそれまでPAありの演奏が当たり前だったわけで、生音が聴こえる広さ(狭さ)はわかっていても演者としてもスピーカーで音楽を聴くという感覚からなかなか頭が切り替わらない。
どういうことかというと、小さい音も大きい音も等しくお客さんの耳に届いていないといけないという呪縛みたいなものから解放されるまでには一定の時間がかかったなぁということ。
ライブハウスでPAさんはアコギを大きくストロークしようが小さくつま弾こうが等質に音のレベルをなだらかにして聴きに来た人にスピーカーを通して届けてくれます。
そういった作業をしてくれる立場の方は当然生音ライブなわけでいません。
大きい音は聴こえるし、小さい音は聴こえにくい。お客さんの方を向いて歌えば聴こえやすいし違う方向を向けば聴こえにくい。当たり前のことを受け入れるのには何度も何度も色んな場所で生音でライブをおこなうことが必要でした。
おかげでこれくらいの広さだったら、この向きでこう音を出したらどんなふうに届くかみたいなことはだいたいわかってきました。
最近はすっかり生音のライブのお話をいただくことも多くなり、世間的にも生音ライブが増えているように感じています。
歌い、演奏する側としては体力や精神的な面でマイクがある方がそりゃあ楽です。喉の調子があまりよくなくても、ある程度のレベルで演奏ができます。また、マイクを効果的に使って(マイクとの距離を調節する等)声を張り上げなくてもダイナミズムを容易に作り上げることができるので、そりゃあ楽です。なんて便利なんだマイク。と思います。

生音ライブに慣れることが、歌う人にとって大事かどうかは正直わかりません。決して声が大きい者ばかりが偉いわけでもありません。僕は生音ライブがある程度自分で満足いく形でできるようになりましたが、そのことで失ったものがきっとあると思っています。
生音ライブを頻繁にするようになって声が大きくなりましたが、声が小さいことを得意とした演奏のアイデアなんかについてなかなか頭を使うことはなくなってしまいました。
新しいことができるようになることは、できなかった日に戻れなくなるということで、それはまた人間のことなので身体の衰えによって以前の状態に戻ったように見えることがあるかもしれないけれど、不完全な状態を活かしたまま完全な状態にバージョンアップできないということです。

現在は誠光社の堀部さんがまだ恵文社の店長だったときに、コテージでオクノ修さんのライブがあるということで声をかけていただき、覗きに行ったのですが、簡易のPAセットがあって、修さんはスピーカーの音と生音が半々くらいで聴こえる絶妙な塩梅でライブをされていまして、なんか、こう大人だなぁと思ったのを覚えています。スピーカーか生音かみたいなところに何の拘りもなさそうなところに。
後日、ギターを持って響きをちょっとだけ確認したいということでコテージにお邪魔して、ああとてもいい響きだなということでそこから半年に一度のペースでライブをさせてもらっています。

自分の歌は、地声と裏声を使うので、年齢とともにいつかは同じキーが歌えなくなると思います。それは訓練次第である程度はキープできるかもしれないし、抗えないものかもしれない。マイクがない空間でただ歌っているだけのライブを映像にしておきたいという思いがありました。綺麗なうちにヌード写真集を出しておきたい気持ちもこんなものなのかもしれません。

厳選したセットリストで、昨年末のライブを収録しています。
『Breath』以降の曲も収録しています。
DVD、ご覧ください。
ある意味、ハダカです。
よろしくお願いします。